【映像・広告】「2014年 カンヌライオンズ報告会 第1部」10月7日13時~16時(@有楽町朝日ホール)
2014年10月15日 12:59
今年もACC主催のカンヌライオンズ報告会が行われた。
「カンヌライオンズ 国際クリエイティビティ・フェスティバル」は
毎年6月に行われる広告業界の世界一大きな祭典であり、
ビジネスの場でもある。
今年公開された映画「ジャッジ」
(制作会社は東北新社グループのプロダクション・カンパニーの
二番工房!)そのものの世界が繰り広げられる。
あれは映画なので、なにもそこまでとか、そこまでやるか・・・?
と思われる人もいるかも知れないが
本当にそこまでやっているのがカンヌライオンズ。
今年も日本から多くの広告クリエイターのトップクラスの人たちが
審査員で参加した。
6月に結果がわかって、いろんな人の発言を見ていて、
今年のトレンドなどがわかった気になっているのだが、
こうして時間をおいて審査員の方々から直接お話を聴くことによって
カンヌでのあの作品の意義は?
そしてどう見ているのか?
という視点なども教えていただきとても刺激的な
3時間のセミナーだった。これで2000円は安い!
この日は電通とグーグルが
共同で新たなビジネスを始めるという発信があった。
鏡さん(映画「ジャッジ」にも、リリーフランキー演じる
カガミさんという伝説のクリエイターが登場する。W)の
あいさつのあと、
フィルム部門の審査員をされた古川裕也さん(電通)から
フィルム部門についてのお話を聴く。
演題は
「いちばん強い道具」
フィルム部門のベスト4は以下の4つ
実際にグランプリをとったVOLVOとそれ以外の三つのフィルム
1、「the epic split」Volvo
https://www.youtube.com/watch?v=M7FIvfx5J10
2、「sorry I spent it myself」A Harvey Nichols
https://www.youtube.com/watch?v=ITyeI3YyYw8
3、「Sound of HONDA」HONDA
https://www.youtube.com/watch?v=6vGV3zmDZFw
4、「Frist kiss」Wren
https://www.youtube.com/watch?v=IpbDHxCV29A
実質この4作品が今年のカンヌでグランプリを争った
ということを古川さんは言われた。
ボルボは正当なフィルム作品ではあるのだが、
ジャン=クロード・ヴァン・ダムの股割と
エンヤの音楽に朝日が昇るというマジックタイムでの撮影を行い
エモーショナルな部分(右脳)に
訴えかけるようなフィルムになった。
ハーヴェイ・ニコルズは、
クリスマスギフトというものの価値を根底から
覆すキャンペーン、誰かにプレゼントするのではなく
自分のためにそれゆえ1ポンドそこらの安価な商品を
再デザインしてハーヴェイ・ニコルズのギフトとして再構築する、
という洒落がこのキャンパーンの一番面白いところなのでは?
Hondaのキャンペーンに関しては、
古川さんは自社の作品なのでまったく議論には参加できない
というのがカンヌのルール。
「ジャッジ」ではそのルールが逆説的に物語の中で語られる。
ただテクノロジーを使って、データを人の気持ちが動くような
イベントに作り替えることが出来たというのは
今までのカンヌの歴史の中でも誰もやってこなかったのでは?
という意味では先進性という意味で評価されるべき作品。
しかし、それはチタニウムのカテゴリーなのでは?
という議論が行われたそうである。
そして、異色のインターネットムービーが「ファーストキス」という
ロンドンのアパレルメーカーのキャンペーン。
何も語らずただその姿を見せるだけ。
20組の初めて出会った男女あるいは
男性同士、女性同士がファーストキスをカメラの前で行うというのを
延々と撮影したものを編集したもの。
これがネット上でバズり多くの人が動画を見たらしい。
このフィルムには広告主のロゴも出ないし、
ナレーションも何も入らない。
こうした今までの広告の話法とは真逆のキャンペーンが
話題になるということが新たな時代の予感を感じさせる。
個人的にはフィルム部門はこの「ファーストキス」なんだが、
これを認めてしまうと大きく既存の価値が崩壊する、
というところで会場での挙手の結果も
1、ボルボ
2、ホンダ
3、ハーヴェイ・ニコルズ
4、ファーストキス
の順だった。
古川さんはTVCMを今はTVで見るとは限らない
ということを何度もおっしゃった。
今回のフィルム部門の作品もまずはネット上、
主にユーチューブのプラットフォームに掲載され、
それが拡がりシェアされ、
その後、ようやくTVにて放送されるという段取りを経るとのこと。
多くのフィルムがそういう流れをたどるのだが、
TVで流すことが一流のブランドの証であるという
存在証明みたいなところもあるのだろう。
そのことについて古川さんは強調されていた。
まさに演題となっている「いちばん強い道具」ということを
おっしゃっているのでは?
以下はお話の中で出てきたフィルム。
P&G
「thanks mom」
https://www.youtube.com/watch?v=2V-20Qe4M8Y
https://www.youtube.com/watch?v=57e4t-fhXDs
https://www.youtube.com/watch?v=7RR-r2n5DLw
続いてのスピーカーは電通の菅野薫さん。
菅野さんのプロフィールを
電通クリエイティブラボのページから引用する。
(以下)
株式会社電通
クリエーティブ・ディレクター / クリエーティブ・テクノロジスト
東京大学経済学部卒業。統計学を学びつつ、音楽活動に熱中。
ジャズ・ギタリストとして様々な活躍をしつつ、
MAX/MSPを駆使した音楽制作活動に傾倒。
この経験が、クリエーティブ・テクノロジストの原点となる。
電通入社後、自然言語処理やデータ解析の研究開発業務や、
国内および海外の商品サービス開発、広告キャンペーン企画などの
クライアント業務に従事。
テクノロジーやデータで人の心を動かす
新しい表現方法を開拓している。
Cannes Lions チタニウムライオン、
D&AD Black Pencilなど多数受賞。
菅野さんが作ったキャンペーンがまさに
「Sound of Honda」
菅野さんは今回「サイバー部門」の審査員として
カンヌに行かれた。その審査とは?
と聞くと、3660本の応募があったらしい。
1本2分の紹介ビデオがあるとして、合計7320分!
時間計算すると122時間!
7日間の審査なので単純に7で割っても1日17時間半!
を見ていたことになる。
この審査・・・過酷以外の何物でもない・・・。
審査員のみなさまは本業をやりながら
これをこなしていくという本当に大変な作業をされたんだ!
とちょっと涙が出ます。
朝昼晩と食事をし終わったら
飲みに行ってワールドカップを見るということを
毎日されていたと聞いたが、
そんなことをやっていたら寝る時間が、と思うのだが、
どの国のクリエイティブもある瞬間は
寝る時間を惜しんでクリエイティブに励むというのは
同じなんですね。
そうしたことが好きな人だけが、そこに残ることになるのかも。
菅野さんいわく今はもはや「サイバー」のないキャンペーンはない、と。
必ずどこかでサイバーは使用される。
サイバーにもいくつかのカテゴリーがある。
その中で「オンラインビデオ」というのがあるのだが、
ここにはフィルム部門で出されたほぼ
すべてのものが入っているらしい。
これを聴いていて思ったのは
カンヌの主催者がめったやたらに
カテゴリーを増やす戦略をとっているのだろうな、ということ。
応募本数が増えると出品料(約10万円!)収入が期待でき、
さらにカテゴリーが増えるということはカンヌへの参加者も増え、
参加費用(数十万円!)も入ってくる。
広告業界はビジネスとしてこの場を利用するという
循環が出来ている。
サイバーライオンの審査は日本が全滅状態だったらしい。
Honda以外はすべて審査から落ちたそうである。
ここで紹介されたのは前出のボルボと
チポトレーの「the scarecrow」
https://www.youtube.com/watch?v=lUtnas5ScSE
これ以外にも多くの動画があり、ゲームなどの動画も。
ファレル・ウィリアムスの 24 hours of happy「ハッピー」
https://www.youtube.com/watch?v=k-FFdYoq2r8
などの紹介があった
個人的に一番好きなのが
ブリティッシュ エアウェイズ「Magic of flying」
https://www.youtube.com/watch?v=qq3x23u6AhA
テクノロジーを使って従来のビルボードをこのような形に
発展させたという意味で
とても価値のある仕事。
それよりも何よりもあの飛行機どこに行くのだろう?
という子供の時に思った単純な思いがカタチになっているのが、
いいのではないでしょうか?
また、ハイネケンのバズを爆発させるようなビデオの紹介もあった。
https://www.youtube.com/watch?v=6nKkOjkKyf8
1分40秒あたりからが・・・。
またサイバーでは社会的な事象を扱ったものも多く、
菅野さんからいくつか紹介があった。
https://www.youtube.com/watch?v=RBQ-IoHfimQ
https://www.youtube.com/watch?v=9hhyTNMlyUg
上記の2本のように子供の人権を守ろうとするもの。
ここからテクノロジーは「人の役に立つんだ」ということを
菅野さんはおっしゃった、
テクノロジーを使って「for good」なキャンペーンをするということは
今や、広告に携わる人たちの使命になってきている。
そして最後に見せてくれた動画はとても心を打つキャンペーンだった。
https://www.youtube.com/watch?v=-S-5EfwpFOk
このキャンぺーンのオリエンテーションは
ブラジルの英語学校での先生を募集しますという
キャンペーンだったそう。
ブラジルでワールドカップが開催され
2016年にはオリンピックが開催される。
そのためにブラジルでは海外からくるお客様と
コミュニケーションするための英語学習がブームになっているそう。
でも、生徒は集まるのだがそれを教える先生がいないので、
どうしたら先生が集まるでしょうか?
というオリエンだったらしい。
広告会社が出した解決策は、先生募集告知広告ではなく、
米国の老人ホームなどにいる
時間がたくさんある老人にネット経由で英語を教えてくれる
授業をやってもらおうというものだった。
米国語のネイティブな発音をブラジルの生徒は学べ、
シカゴの老人ホームのおじいちゃんやおばあちゃんは
そこでブラジルの若者たちとコミュニケーションできる。
こうした仕組みがとても素敵だな!と思った。
緯度は違うが経度が同じなので
時差がほとんどないというのも大切なポイントなんだろう。
日本でもフィリピン人の英語の先生とネット経由で
英会話学習を格安でやるというビジネスモデルがあるが、
まさにそれを広告キャンペーンの提案として
行った事例がこうしてあったことに感動した。
ここで前半の終了。休憩が10分。(山下治城)