【映像翻訳】学科主任が語る2013秋トライアル講評会
2014年2月21日 16:17
熱戦が繰り広げられたソチ五輪ではないですが、年に2回訪れる、胃が痛くなる季節がやってきました。もちろん、私自身がトライアルを受けるわけではないので、一番胃が痛いのは、実際にトライアルを受ける受験者だとは思いますが。教室に入っていくと、いつもより緊張した雰囲気が教室に溢れていた。まずは、始める旨を伝えるが、「しーん」と静まりかえっている。
いつもの通り、外画制作事業部の吹替とVO(ボイスオーバー)の発注窓口の津田課長と字幕の注窓口で、アカデミアで講師もしていただいている高橋課長(字幕)のお二人から、仕事を受ける心構えや、仕事を発注する上でトライアルの成績がいかに大切かを話していただいた。
その後、字幕・吹替・VOの原稿(成績も含む)の返却。受け取って席についても、ひと言も発しない学生たち。
最初は字幕の成績付けを担当した川又講師。まずはプロであり講師でもある川又講師から、きつい一言。
確かに「プリンターが壊れたから申し送りを付けられない」なんて、言い訳にならない。
「字数をオーバーした原稿は見る気もしない」も理解できる。その他にも、全体的に出来の悪かった箇所についてのコメントあり。最後に模範解答として、川又講師が翻訳した訳をSST-G1に載せて見せてくれた。さすがに締まったいい訳。みんなはこの訳を見ながら、何を感じたのだろうか。
次は吹替を担当した佐藤講師。「今回は作品も難しかった」という講師からの慰めのコメントもあったが、実際の仕事では翻訳者は作品を選べない。どんな仕事でも対応できる力がなければ、プロの翻訳者とは言えない。佐藤講師は参考訳を配り、「受験者の書式レベルではよくなっているが、声優が映像と台本を見ながら、演技をすることを意識して台本を作ってほしい。その辺りも参考にしてほしい。」と前置きをして解説に。トライアルといえども、次に声がかかる時には、一人前のプロとして翻訳する必要がある。気を付けなければいけないことは、本当にたくさんある。「個々へのコメントは原稿に書き込んであるので、しっかり見てください」と言い、解説は参考訳をもとに、その箇所ではどういう方向で翻訳をしていけばいいかを細かく解説。こんな短いシーンでもポイントはたくさんあるんですね。
最後はVOを担当した、本学で講師もしている赤池講師。私の前の席の人の原稿を覗き込むと赤がいっぱい。一人ずつ、こんなに手を入れていたら、一体どれで時間がかかるんだろう。まずは今回の素材の特徴についての話、思い出してもらうために映像を皆に見せるとことからスタート。「番組の形式もいつもと違うし、字幕で出す部分もあったりで、戸惑ってしまった方が多かったようです。」とこれから始まる講評を聞くのが怖くなる始まり。キャラ設定の話、尺合わせ(吹替でも皆に注意があった)から、「根性」の話まで。赤池講師の解説は一文ずつ丁寧に進んでいく。方向性だけでなく、具体的に適した訳をいくつも出しながら、NGワードについての話も含めながら、解説は進む。うーん、もうお腹いっぱい。でもためになる。
東北新社 外画制作事業部が主催するトライアル。普通は受験して「合格・不合格」を言い渡されて終わりだ。アカデミアでは、添削をした原稿を返却し、採点をした講師に講評をしてもらっている。「こんな至れり尽くせりの学校なんて他にないんだから、もっと頑張ってくれよ。」鈴木の祈るような気持ちは、2014年1月31日の夜、講評会の会場にいる受験者たちに伝わったのだろうか。
映像翻訳科学科主任 鈴木吉昭