【映像・広告】「夏季短期特別セミナー2011 その2」草川衛 AC専務理事(@映像テクノアカデミア)
2011年8月22日 11:06
19日の金曜日に来て頂いたのは
ACジャパンの専務理事の草川衛さんでした。
草川さんからは、「公共広告は世界を救うだろうか」というタイトルで、
丁寧に誠実に、ACジャパンの現状と、
予想されるであろう未来について語って頂きました。
3・11日の大震災の後、全ての放送局が報道番組一色になりました。
3月14日から日本民間放送連盟は広告解禁を支持したのですが、
ほとんどの広告主は「自粛」の対応をとりました。
そこで大量に流されることになったのがACジャパンのCMでした。
今年は、そういう年だからこそ、
ACのことについて語ってもらおうと思い草川さんに来て頂きました。
オンエアー当初から
「エーシー♪」
のサウンドロゴばかりが
耳につくなどの意見があり、急遽サウンドロゴを外す
改訂をしたり、
震災直後に新たなACの素材を作るべく
急いでその準備をした
というようなリアリティのあるお話を伺うことが出来ました。
ACジャパンの前身である公共広告機構が発足したのは
1971年のことです。今年で丁度40年になります。
ACの成り立ちから仕組みそして
どのような種類のキャンペーンをしているのかを
系統だって知ることが出来ました。
40年経つと4マス(テレビ、ラジオ、新聞、雑誌)だけの
メディアではコミュニケーションが立ちいかなくなりつつある。
そしてこれからに向けて、WEBの利用や
ソーシャルメディアの利用を考えていかなければいけない時代となった。
というような話も伺うことが出来ました。
震災後、様々なACのCMが新たに作られて流されました。
みなさんもその頃に大量に流れた
ACのCMを覚えていることと思います。
あの頃のわたしたちは、毎日テレビにかじりつき震災後の報道を注視していました。
ACにはそれらのCMを見た視聴者から
様々な意見が寄せられるそうです。
そしてクレームが来るものとそうではないものとがあるらしいと聞きました。
クレームが少ないのはドキュメント的な要素が大きいもの。
実際の事実や実際にあった映像を編集したものに関しては
生活者の方々に
受け入れられたそうです。
この話には広告がもっている根源的なものが含まれています。
広告表現とは基本的に「虚」なものである。
「虚」で描かれる世界が楽しかったり夢があったりするものであることも
一つの事実なのでしょう。
しかし「実」という現実が大きすぎる場合、
「虚」を描くことが空虚に見えてくるのではないか?
というジレンマがある。
「虚」のフレームの中でも「正義の押しつけ」や「上からの説教」とならない
配慮を持って生活者に語りかけることがポイントです。
そして、ACジャパンの表現でとても重要なポイントは
「解決への指針が示せるもの」
ということ。どちらにも解釈できるものや、解釈を
生活者にゆだねてしまうものは現状では
なかなか難しいということをおっしゃっていました。
これは海外の公共広告との大きな違いでもあります。
海外では解決の指針を示さなくても、
問題を提起することの強さがあれば、それでいいということが実際にあります。
個人的に一番興味深かったのが
地域で実際に制作された最近のACのCMでした。
その中でも7月からのオンエアー予定が
1カ月遅れて8月となった東北地方の「復興を目指して:笑顔の花」というもの。
アーティストのキマグレンが
気仙沼の小学校に実際に行きイベントを行った
もようを撮影したドキュメントタッチのものでした。
広告の宿命とでも言える「虚」のフレームの中で「実」をどのように伝えていくのか?
ということの困難がある。
このことを知り、制作していくことが
今後の公共広告のクリエイターに求められていく課題であると感じました。
「実」のなかの手法の一つとして
ドキュメント的なるものというのがあるのでしょう。
そして最後に来年のACの大きなテーマのことを語られ
草川さんの講義は終了しました。
講義終了後の質問も、「生きる」という根源的なものに関する質問がいくつかあり。
このことをきちんと考えるのが
これからの広告クリエイターの役割であるのだなと改めて感じました。