【映像・広告】「信也のまんま 2」資生堂 岡本善勝さんと中島信也の対談レポート!
2013年8月23日 10:52
「信也のまんま」今年最後のゲストは資生堂の 岡本善勝さん。
岡本さんは福岡の久留米のお生まれ。実家は京都の呉服商です。
大学を選ぶときに美術系か工学系に行こうか迷っていると、
自宅から通える九州芸工大(現 九州大学 芸術学部)の存在を
美術の先生から教えてもらったそうです。
その大学の授業の中で当時、資生堂の宣伝部長だった
中村誠さんの集中講義があり、広告業界と資生堂に魅力を感じられ、
めでたく1980年に資生堂宣伝部に入社されました。
それからデザイナーとして働きはじめられ
セルジュ・ルタンスと同じパリオフィスに駐在して
海外向けの広告をセルジュ・ルタンスとともに手がけられました。
その後、ブランドのクリエイティブディレクターとなり、
化粧惑星、マジョリカマジョルカ、HAKUなどのブランドを担当されました。
中島信也ディレクターとの出会いは資生堂宣伝部の
奇人と呼ばれている八村邦夫、石塚靖男の紹介だったそうです。
その後岡本さんはACCの審査員をおやりになります。
1999年から2002年。
このとき中島信也ディレクターと一緒に何日も審査をすることで親しくなられ、
一緒にする仕事も増えていったようです。
二人が一緒にやった仕事でいちばん好きなCMを岡本さんに選んでいただきました。
ひとつは熊木杏里が歌い、マイコが演じる、
資生堂企業CM「新しいわたしになって」
というものでした。歌詞を中島信也が書き自ら企画・演出したもの。
中島ディレクターはこの企画を東北芸工大に向かう新幹線の中で思いついたそうです。
「本日わたしは、ふられました、わかっちゃいたけど、無理めだと...。」
という言葉がふっと降りてきたそうです。
このフィルムは今もとても素晴らしく
何度も何度も見てみたいという気になるものでした。
そして、もう一つが「化粧惑星」この立ち上がりの
シリーズも今見てもチカラがあり
特に工藤静香の「びつくりしました」と
「つ」を強調する手法はとても印象に残っています。
また、岡本さんが手がけられたブランド、
マジョリカマジョルカのTVCMや
セルジュ・ルタンスとともにつくったインウイのCMを見ることができました。
震災後1年後に放送された、
被災された方々にエールを送るという意味を込めて
震災の翌年2012年4月8日、資生堂の140周年の事業として
「化粧のちから」のTVCMが作られました。
演出をしたのは中島信也ディレクターです。
蒼井優が出演しているこのCMには
実際に被災された方々の写真が使われています。
どんな状況になってもお化粧をしたい、きれいでいたい
ということは
善く生きようとすることだ!
というメッセージが強く伝わってくるCMでした。
また、この日番外編として岡本さんの先輩がおつくりになった
「資生堂オーデコロン モア」のCMを見ました。
パラゴンの創設者でありカメラマンの横須賀功光さんの仕事です。
これを見た中島ディレクターがあの時代の実験精神にあふれるCMを見て、
なかなかええですねえ!と感心していました。
また、お二人の出身が九州は福岡の久留米と八女ということもあり、
印象に残った他社のCMとして
「九州新幹線全線開業」のフルバージョンを見せていただきました。
このCMも2011年、3・11とちょうど同じ時期に放送され
3・12開業ということだったのですが
震災の影響で放送が中止になってしまい、
その後ユーチューブなどで爆発的にヒットしたという
伝説的なCMとなりました。
岡本さんが最後にこの仕事についてを語ります。
良く先輩に言われたのが、天才でなくてもいいが
天才とつきあえなくちゃいけない。
というもの。
特に資生堂宣伝部は直接、CM制作会社と一緒に仕事をしてきたという伝統があり、
宣伝担当がCMディレクターたちとガチンコで向き合いながら
CMを創ることが求められてきました。
クリエイターと面と向かって
コミュニケーションをとっていくという経験を
通じてさらに大きな人間に成長していくのでしょう。
それを実行してきた伝統的な文化みたいなものが
資生堂の宣伝部にはあるのだと思います。
中島ディレクターの言葉に
「創造力」と「想像力」が大切なんだ!
というものがあります。
特に後の「想像力」とは
お客様はどう思うのだろうか?
スタッフはどう思うのか?
という思いやりの気持ちを持ち深く考え続けようという言葉です。
これは簡単ではありません。
そしてお客様に媚びるということでもありません。
考え抜くということを通じて人のキモチに寄り添うことが
出来なければクリエイティブではないという言葉は
会場のみんなの心の中に響いたことでしょう。
岡本さんは、現在CSR環境企画室というところに在籍され、
企業と社会をいかにして持続可能(サステイナブル)にしていくのか?
ということを考え続けていらっしゃいます。
言い換えると、地球と人間とそれに関する企業は
どこに向かっていけばいいのか?というようなこと。
それは、わたしたちのライフスタイルを変えるようなことであり
その提案がこれからの企業には求められるのだ、
というお言葉をうかがいました。
そうして、あたたかい熱気に包まれたまま、
三夜続いた「信也のまんま」は終わりました。
また、来年もやりたいと思いますので、
みなさん是非、見にいらしてください。