【映像・広告】夏のセミナー2011さとなお・佐藤尚之さん
2011年8月24日 13:56
3回目の夏のセミナーは「さとなお」さんこと、佐藤尚之さん。
「新しいコミュニケーションのカタチとそのチカラ」と題して、
現在の「ソーシャルメディア」の状況と
その未来に関してとてもわかりやすく語ってくれました。
その根本にはSIPSという考え方があります。
2007年に佐藤尚之さんの講義を聞いた時には、
インターネット時代が到来して情報が圧倒的な量になった、
その情報をどのように制御していきながらコミュニケーションをしていくのか?
ということがテーマでした。
昭和の広告の教科書などに書かれている
AIDMAの法則からAISASへと変化しているということについて語っていただきました。
シェアということがその中で重要になってくると。
共感を分かち合うということでしょうか?
そして、4年後に再び来て頂いた今回のお話では、
ツイッターやフェイスブックとの連携によって新たな価値が創出されたことを、
さとなおさんは強調されていました。
それはタイムライン(時間軸)という概念がそこにある、ということです。
ツイッターなどはタイムラインに沿って情報が流れてくるのを
見ていますのでその同時性みたいなことがとても重要になってきます。
例えば3・11の震災後に都営地下鉄が運行を開始するという、
猪瀬直樹東京都副知事の「つぶやき」はまたたくまにリツイートが繰り返され
拡散していきました。
猪瀬さんを全くフォローしてなかった人も
他のフォロワーのリツイートで知ることが出来ました。
そのつぶやきはテレビの報道よりも30分以上も早く、
ツイッターのタイムラインの即時性を物語る貴重なエピソードとなりました。
さとなおさんは「さとなお.com」というブログを運営しており
1日3万人以上が訪れる人気サイトとなっています。
また、ツイッターのフォロワーは6万人以上で、
その影響力はかなりのものです。
というのは、彼が発信したものが次々と引用され
リツイートされていき爆発的に拡がっていくということが可能だからなのです。
そのために一番大切なことは「共感」であると、さとなおさんは語ります。
「共感」なくして拡散なし。
猪瀬直樹の「地下鉄運行のつぶやき」もそうした意味で
貴重な情報とみんなが思ったことで、
その「共感」がより拡散する結果となったのでしょう。
その「共感」をいかにして獲得していくか?というのが今後の大きな課題です。
単にそのブランドや商品が好きという人が、
ブランドや企業の永続的なコミュニケーションによって
ますます好きになる。
さらに、好きになるとそれを誰かに勧めたくなる。
そして最後には、そのブランドや商品を
積極的に推奨してくれる人になる、というプロセスの形成が生まれます。
その推奨者のことを「エバンジェリスト」
(evangelist: 福音伝道者、『特定の分野への 』熱烈な支持者)と呼ぶそうです。
アニメ映画「エバンゲリオン」はこの言葉から来たものですよね。
さとなおさんは自分はアップルコンピューターの「エバンジェリスト」である
という例で説明してくれました。
例えば、今講義で使用している、最新のマックブックエアのことについて
「世界で再薄のこのデザイン!」などと、
アップルから頼まれもしないのに自らの気持ちで話し
みんなに伝えていく。
そういう「エバンジェリスト」になってくれる人を何人育てるのか?
というのが今後の新たなソーシャルメディア時代の
マーケティング目標のひとつになるのでは?
ということを語っておられました。
そのためには「エバンジェリスト」候補者との、長いおつきあいが必要になるだろう、と。
その結果、初めて「エバンジェリスト」が生まれてくるのでしょう。
そのために企業は生活者とのロングエンゲージメントという考え方をベースに
コミュニケーションをやり続けていかなければならないということを強調されていました。
昨年のカンヌ広告祭で受賞した
「ゲータレード」の「REPLAY」のキャンペーンを例に具体的に説明がありました。
往年のフットボールの引き分けになってそのままになっていた伝説の試合を、
あの時と同じメンバーが練習し集まって30年ぶりに再試合を行うというイベントです。
メディアはこれをこぞって取り上げ、3万人入る試合の会場から
多くのつぶやきや発信がなされ、中継され、
米国中の話題になったそうです。
実は、ここで試合報告のTVCMを打つとさらに拡がりが加速するらしいのです。
が本件では予算の関係で打つことが出来なかった。
実は、試合終了後の、このタイミングでのTVCMは
かなり効果的であり新たな「エバンジェリスト」候補者を
産むきっかけになるのです。とおっしゃっていました。
そして、この中高年へのエールのようなキャンペーンは
これからも続けていく予定だそうです。
バスケット、野球、サッカー、そして音楽イベントまで、
時期に合わせての修正は必要かもしれませんが、
こうして長く続けていくことによって、
がんばる中高年に対して「ゲータレード」が応援しているよ!
というメッセージは深く到達していくのでしょう。
こうして、長期に渡って生活者とコミュニケーションしていくものは
これから、1企業や1商品だけではないような気がしました。
行政や自治体や学校などもこれから、生活者に対して
どうコミュニケーションしていくか?という方法がとても大切になるだろうと思いました。
講義の冒頭で、さとなおさんは、このようにお話されていました。
オバマ大統領のコミュニケーションチームは250人います。
しかし日本の首相はゼロである。
あるきっかけから、さとなおさんの提案で鳩山元首相は
首相就任後、ツイッターを始めました。
また「鳩カフェ」などのイベントも行われたのも
覚えている方も多いかと思います。
今後の、さとなおさんの活躍が楽しみですね。
もうすぐ出版されるであろう、
佐藤尚之の「明日の広告」に続く新刊に
本日の講義で語られたことが書かれるのでしょう。
最後に、さとなおさんの名言をご紹介します。
これはフェイスブックの「Like!」(いいね!)ボタンの存在に対しての言葉です。
「情報は肯定される」 という前提に立っている。